そしてついに太陽が昇り始める ものすごい早さで
夢中でシャッターを切る
辺りはまたたく間に燃えるようなオレンジ色に包まれてゆく

海は遠浅で潮が引いたため
前日よりも波打ち際が50m程遠くなっている
真っ白な砂は昨日まであった波が真っ平にしてくれている
波が自然に整備したその砂の上を
猛スピードで位置を高くしてゆく太陽に照らされながら裸足でジョギングをした
白く美しい砂に自分の足跡だけがどんどん刻まれていく
夜中に積もったフワフワの雪
いつもより早起きして一番乗りの足跡をつけてはしゃいだコドモの頃をふと思い出した
右手には最後の力を振り絞るように月が輝き
左手にはその月を吸い取って行くようにどんどん逞しい光を放つ太陽
楽しくて嬉しくてひたすら走っていたいキモチなのに
何故か涙が溢れて止まらなくなってしまった
ワタシがつけた足跡はあと何時間もすれば波が丸ごと消し去ってゆく
あたりまえだけど人間は大自然の中では何をする事もできず
ただすっぽり包まれているだけなんだと実感した
漠然と自分の無力さを思い知らされたような気がした
でも自然の中においてはどんな人間もちっぽけで無力なのだ
そう思うと少しだけココロが軽くなった

走り終わって暫く海を眺めていた 不思議と何も考えていなかった
嘘のようにココロが真っ白になっていた
夜から朝へ 日々繰り返される当たり前のリセットを美しいこの島で目の当たりにした
そしてそれは知らぬ間に無駄なものばかりを抱え込みすぎている自分のカウンターをもゼロにしてくれていたのだ
頑張ろう まだ頑張れる ふとそう思った

真っ白で平らになったココロに
波に負けないよう自分自身が誇れるような足跡をつけていこう