__________________________________________________________________________________________________________________料理の準備が整い始めると皆抜群のタイミングでテキパキとテーブルセッティングを始める。パッとテーブルクロスをひるがえして、見事な手さばきでナイフやフォークやお皿を並べてゆく。通常これは子供達の仕事。中央にガス入りとガス無しの水、パンは無造作にテーブルに直に置かれ、その横には溢れんばかりのプロシュート(生ハム)これが定番セッティング。パスタのソースを作り終えたところで私も早々と席へ促された。皆座ってパスタが茹で上がるのを待つ、やはり噂は本当だった。マンマは片時も離れずにパスタをかき混ぜながら、パスタの歯ごたえを確かめる事なく茹で上げた。うーん、神業としか思えない程茹で加減はいつも完璧だ。通常はプリモ(アンティパストの後に出される料理)だが、おそらく家族の為にいつも一生懸命なマンマへの労いの気持ちからだ。パスタさえ茹で上げれば、あとはゆっくり食事ができるからだ。もうひとつマンマへの計らいを感じずにはいられなかったのが食器。通常はとても素敵なお皿やグラスなどで食事をしているのだが、大勢ゲストがきた時だけ紙皿に紙コップ。人が来たときだけいい食器を使ってしまう日本人とはまさに逆転の発想。イタリアのマンマは決して気取ることなく人々を温かくもてなすのである。 マンマの「マンジャーレ!召し上がれ!」で食事が始まり、間髪入れずに「ブォーニー?美味しい?」とそれぞれに聞く。皆口々に「ブォーノ」を連発し、その後は何故か黙々と静かに食べている。談笑しながら食事をだらだらと楽しむ人達では・・・?と思いきや、マッハの速さでパスタをたいらげてから賑やかしくパスタの感想を話し始める。「塩加減が絶妙だったよ」「硬さが完璧」などいろんな感想が飛び交う。事実上少し手伝っただけの私への賛美もかなりのもので恐縮し通しだった。熱いものは熱いうちに食べるのがイタリア人の鉄則。(後で知ったのだが、現に食事の遅い人は仕事が出来ないという諺まであるそうだ)特にパスタに関しては皆我々日本人が熱いうどんをすするような勢いでむさぼる。その姿に強く親近感を抱いたのだった。 _________________________________________________________________________________ |