_________________________________________________________________________________________________________________________イタリアの食事でいちばん驚いたのは食間の長さ。皆食べることは勿論お喋りも大好き。話に花が咲いたら食事をサーブする側もひとやすみ。このひとときがとても楽しいのだが、困った事に満腹中枢の活発化は避けられない。最初の頃は美味しいからとついつい飛ばして食べすぎてしまい、セコンドから食べられなくなり非常に悔しい思いをした。その教訓を生かしアンティパストは控えめに。食卓に置かれているパンやプロシュートを少しずつ休み無く食べると、案外最後迄行ける。でもどうしても駄目な場合はサーブされる前に断るのが良いだろう。 イタリア人の食べ物への愛情を感じずにはいられないのが、食べる時のマナーだ。硬いパンをくずが出にくいように器用にちぎって、その上に山盛りに載せたプロシュートをこぼさず上手に口に運ぶ。スープも最後の一滴までしっかりパンでぬぐって食べる。とにかく食べているその姿が美しい。料理をいかに無駄なく楽しむかがすべてと言わんばかりの食いっぷり。そして最高の笑顔で最後の一口を締めくくるのだ。そこには堅苦しい上品さは微塵も無く食べ物への愛情のみが存在している。お皿が空く度に皆でささっとひとまとめにする。次に出てくる料理が遅れないよう絶妙のタイミングで片付けるのだ。早食いのもうひとつの理由はもしかしたらここから来ているのかも知れない。なるべく楽に片付けられるようにというテクニックでもある。しかし料理と同じく片付けも大声で喋りながらの楽しい作業となる。テーブルクロスも使い終えると窓から手を出して広げはしゃぎながらパンパンと豪快にはたくのだ。彼らは単に食べる事だけではなく、食事にまつわるすべての作業を心から楽しんでいるのである。 |