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朝食は食べずランチは1時か2時頃から始まり、長く時間をかける。ゲストが来た時や休みの日などは2,3時間になる事もしばしば。パパは約20分かけて職場から戻り、子供達は学校を終えて家族全員揃って食べる。パパは仕事中だというのにワインを空けてすっかりくつろぎモード。子供達は今日学校であった事をマンマやパパに報告する。家族のふれあいを最も感じるひとときだ。日本では見ることのできないこの光景がとても羨ましかった。パパにその事を話すと「じゃあ日本人はどこでランチを食べるの?」と質問されたので、学校や職場と答えると逆にびっくりされた。家族と離れ離れの食事なんて彼らの辞書にはないのだろう。昼間から飲んだワインも手伝ってすっかり気持ちよくなった私にパパもマンマも「ドルミーレ お昼寝すれば?」と声をかけてくれる。子供達はランチを食べ終えるとサッカーや釣りに出かけ、パパは又職場へ戻る。イタリア人はあまり間食をとらない。カッフェも家では食事以外は殆ど飲まない。ガス入りの水をキッチンで立ち飲みするか、12枚クッキーをつまんだりする程度だ。またビッグランチを取った日の夜はパスタ、パン、プロシュートのみの軽いディナーとなり、ディナーが豪勢な時のランチはシンプルになる。つまり一日に一回ドカンと食べ、あとは然程食べない。上手にメリハリを利かせながら胃袋をコントロールしているのだ。

仕事の日もマンマは家族の為に煮込み料理などを作っていく(マンマはシェフとしてリストランテで働いている)その時はパパが軽快な手さばきでパンやプロシュートを切ったりサーブしてくれる。夫婦で出かける時はその役目が子供達になり、ノンノに食事の準備をするのだ。長女のエレナが帰ってきた時は、彼女がマンマ代わりに美味しい料理を作ってくれる。でもお肉の焼き加減はノンノ、パスタの茹で加減やソースの味はパパに相談しながら調理していたのが何とも微笑ましかった。食におけるあらゆるジャッジは年功序列といったところか。子供達は常に親の味覚を参考にしながら自分の味をつかんでいくのだ。

ディナーの後片付けは力仕事が多い。ペットボトルを潰したり、調理に使った器具やワインの空き瓶を運んだり、時にはプロパンガスを交換したりもする。ここではパパが大活躍。すべてを終えるとまたキッチンに戻り、マンマは煙草、パパは強めのお酒で一日の疲れを癒す。そこへ子供達が飲み物を取りに来たついでに長々と立ち話をしていく。とっても広い家で素敵なリビングがあるにもかかわらず、暫く皆そこを動こうとはしない。マンマにとって最も居心地のいいキッチンは、おのずと皆の集まる場所となり、そこで家族と交わす会話が、一日中働き通しのマンマの原動力となるのだ。キッチンを中心に、マンマを中心に、食を通して家族がしっかりと繋がりあっている。その光景に単に食べる事が好きというだけにとどまらない、イタリアの食文化の底力を垣間見た気がした。イタリア人が自分達の食文化に並ならぬ誇りを持っている理由は、味そのものはもとより、人間本来における食のあり方を理解し、それをきちんと実践しているところにあるような気がする _おわり_


次はイタリアの結婚式へ続きます

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